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形成外科

当院における形成外科は、顔・手・足の骨折を含む体表の外傷や熱傷、褥瘡を含む皮膚潰瘍の治療、皮膚・皮下の腫瘍の切除、顔・手・足の先天異常や外傷・癌などの手術後の瘢痕、欠損、変形に対し、機能回復や形態の再建を行なうもので、患者さまのQOL(Quality of Life)の向上、社会適応性の向上を目的としています。他の診療科との境界領域も多く、必要な場合は連携をとりながら治療を行なっております。

診療内容

形成外科では、体表面の組織の外傷、腫瘍、先天異常などに対して、主に外科手技を用い、機能面はもちろんの事、外見上もきれいに治す治療を行います。

マイクロサージャリーとは

マイクロサージャリーとは、文字通り、マイクロ(微小)+サージャリー(外科)微小外科のことで、肉眼で行う手術とは異なり、顕微鏡を覗きながら行う手術の事です。大きくは、顕微鏡下での剥離、神経外科、血管外科などに分類されますが、形成外科領域では、多くの場合、顕微鏡下での神経、血管吻合を応用した再建手術を指します。臨床的に世界で最初に成功したのは、切断された指の接着で、日本人の医師でした。

【治療の応用】
症例数が最も多いのは、外傷により神経や血管が切断された場合の再建術で、切断指の再接着も含みます。顔や手足の悪性腫瘍を切除した後やケガのために、骨・筋肉・皮膚が大きく失われた場合、骨・筋肉・皮膚・血管を付けて移植します。先天的、或いはケガで手指が失われた場合、足趾より採取した足趾先端部分を移植します。もちろん爪や指先のみの移植も可能です。顔面神経麻痺のため、片側の顔面が全く動かなくなった場合、神経血管付きの筋肉を移植し、反対側の顔面神経に移植した神経を吻合し、健側と同時に麻痺した側の顔面が動かせるようにします。これらいずれの再建術も、顕微鏡下に数mmから0.5mm程度の神経、動脈、静脈を吻合できることが必須の条件となります。このようにマイクロサージャリーの技術を応用することで、外傷や病気の治療の質を大きく前進させることができました。今後も、マイクロサージャリーの技術が、様々な分野に応用されていくものと思われます。

 

【対象疾患】

熱傷(やけど) 特に顔面や手足の特殊領域
顔面、手足、体表の先天異常 口唇裂、多指症、耳の変形、臍ヘルニアなど
顔面の外傷、骨折  
手の外傷、骨折、切断 ゆびを切り落とした、腱を切ったなど
母斑、皮膚腫瘍・癌の治療  
難治性潰瘍、褥瘡 ただれ・とこずれ
瘢痕、ケロイド きずあと・やけどのあと
腋臭症 わきが
眼瞼下垂 まぶたのたるみ
手足の外傷、骨折、切断

【指の切断創の治療】
指を切った時、皮膚だけの単純な傷であれば安心ですが、骨折や神経、血管の損傷があったり、完全に切断されている様な状態であれば、早期に専門家による治療を受ける必要があります。形成外科では、こういった指の外傷の治療も得意としています。

【応急処置】
先ずは、その指先をなるべく清潔なガーゼやティッシュ等で包み、ビニール袋に入れ、氷水を入れた袋の中に浮かべて持参して下さい。
※ 指の場合、保存状態が良ければ、12時間位経っていても再接着可能とされています。出血は、指の付け根を布等でしっかり縛って止めて下さい。中途半端な縛り方では、逆に多量の出血を招きます。

【病院到着後】
全身状態、年齢、合併症、阻血時間、創の状態など総合的に判断し、再接着するか、切断端をそのまま皮膚で覆ってしまう(断端形成する)かを決定します。
※カッターナイフ等による鋭的な切断創ではほぼ100%に近い成功率を上げる事ができますが、 電気ノコ、チェーン、プレスと進むに従い、再接着は 困難となり、旋盤やベルトに巻き込まれた事による引き抜き損傷では生着率は低く、成功しても、動きや 知覚の面で多くの問題を起こす可能性があります。

【手術方法】
再接着手術は、損傷の状態にもよりますが、腋の下への麻酔か全身麻酔で行い、骨の接合、腱の縫合を行ってから、顕微鏡を用いて、血管(動脈、静脈)、神経を縫合していきます。(いずれも直径1mm以下の場合が多い)又、これらの技術を用いる事で、けがの為、短くなってしまった指先や、脱落した爪を、足の指などを用いて再建する事も可能です。

ケロイド、肥厚性瘢痕の治療

けがや手術の傷跡がミミズ腫れのような状態になったり、やけどの痕が赤く腫れ上がったりしているのを見たり、経験された方も多いかと思います。これらは、世間では、ケロイドと呼ばれる事が多いようですが、医学的には肥厚性瘢痕でありケロイドと区別しています。

ケロイドと肥厚性瘢痕の違い

【ケロイド】
ほんの小さな傷がきっかけとなり、その部分がどんどん盛り上がり瘤の様になるもので、肩や前胸部に好発し、体質的な要素が強いのが特徴です。

【肥厚性瘢痕】
よく動く部位、つまり肩などの関節付近、前胸部、口の周りなどに好発しますが、誰にでも起こりうるもので、外傷の場合、損傷の程度のひどい時、手術の場合、手術の際の皮膚切開の方向や縫合方法が適切でない場合に起こってきます。普通、半年から数年くらいで自然に退縮し、白色線あるいは斑になりますが、ひきつれによる緊張や掻破などによる刺激が持続する場合は、ケロイドと同様に自然退縮せずに拡大することもあります。

治療

治療には次のような方法を行っています。

【内服療法】
リザベンという抗アレルギー剤の長期投与の有効性が認められています。

【ステロイド局注療法】
ケナコルトというステロイド製剤を病変部に直接注射します。月に1回の治療でかなりの効果が上がります。

【圧迫療法】
スポンジや弾力包帯などで病変部を圧迫します。

【形成外科手術】
顔の目立つ瘢痕、変形やひきつれを伴うもの、感染を繰り返すものなどは手術適応で、瘢痕を切除し、きれいに縫合(瘢痕修正術)したり、皮膚移植術などを行います。

治療法 肥厚性瘢痕 ケロイド
内服療法
内服療法
ステロイド局注療法
圧迫療法
シリコンゲルシートの貼付
手術 ×
腋臭症の治療

【腋臭症とは】
一般に『ワキガ』といわれ、腋が独特の悪臭を放つ場合をいい、腋窩に存在するアポクリン汗腺の分泌亢進が原因です。臭いの元には汗そのものだけでなく、皮膚の細菌により分解されて生じた物質も関与します。腋臭症の特徴は次の通りです。

  • 思春期に発現し、臭いは夏に強い。
  • 20才代にピークがあり女性に多い。
  • 軟耳垢(耳アカが軟らかい)を合併する。
  • 月経時に増強する。
  • 優性遺伝する。
  • 高率で腋窩多汗を伴う。
※診察時にまずガーゼを挟んでもらい、3分程経ってからそのガーゼの臭いを診てその程度を判断します。
治療法 手術 局所麻酔下に、腋窩に皮膚切開を行い、ここより腋毛部の皮下組織を剥離し、皮膚を翻転してアポクリン腺をはさみで除去する方法です。この方法は、従来より他の施設でも多く使われており、保険が使えます。臭いを確実に70〜80%軽減させる事ができます。欠点は、入院治療が必要である事、傷跡が残る事、術後早期に皮膚の硬化や色素沈着が起こる可能性がある事などが挙げられます。
※尚、腋窩多汗症には、塩化アルミニウム溶液の外用が副作用も少なく効果的です。
眼瞼下垂症の治療

【眼瞼下垂症とは】
先天性、或いは後天性に、瞼(まぶた)が開きにくくなる疾患です。原因としては、下記の三つが挙げられます。先天性の場合は、ほとんどが①によるものです。
①眼瞼挙筋(※1)の機能低下
②.眼瞼挙筋筋膜(※2)と瞼板(※3)の付着部のゆるみ・はずれ
③.瞼(まぶた)の皮膚の老化に伴うゆるみ・たるみ

【腱膜性眼瞼下垂症】

2によるものは、腱膜性眼瞼下垂症と呼ばれ、瞼(まぶた)を頻回に擦るといった機械的刺激や老化によって生じます。また最近、長期のコンタクトレンズの装着による発症例も多く報告されており、瞼(まぶた)の裏側(結膜側)からの刺激も関与しているものと考えられています。

【症状】
瞼(まぶた)の下垂によって物が見えにくくなるだけでなく、無意識のうちに眉毛を引き上げたり、眼の奥のミュラー筋(※4)の収縮が起こり、腰痛、肩こり、眼精疲労、倦怠感などの原因となりうる事が最近の研究で明らかになりました。

【治療】
甲状腺機能低下症、重症無力症等の疾患に伴うものは、内科的治療が優先されます。先天性のものは、挙筋の短縮術か吊り上げ術を行います。3によるものには余剰皮膚の切除術を行います。2では、腱膜を下方へ引っ張り、瞼板に縫い付けます。この場合、一重まぶたの人は術後は二重まぶたになります。手術は、局所麻酔で瞼(まぶた)の開き具合を確認しながら行います。3〜7日間の入院が必要です。治療により、楽に瞼(まぶた)が開くようになるので、物が見えやすくなるだけでなく、上記の諸症状の改善が期待できます。

医師紹介
医師
岡 潔
資格・役職等 ■日本形成外科学会専門医
■臨床研修指導医
卒業 大分医科大学
研修施設等 長崎医療センター
鶴見病院