薬局勉強会

福岡記念病院の薬局では、毎週1つの薬剤について徹底的に理解するための勉強会を行っています。 ここでは、勉強会のレポートを公開しています。

 
■ ロコアテープ

平成30年6月5日(火)

[講師]帝人

ロコアテープは一般名エスフルルビプロフェンという、変形性関節症における鎮痛・消炎に適応を持つ貼付薬である。
 本剤はフルルビプロフェンのS体のみからなる製剤であり、組織移行性試験により、滑膜において約13倍、間接液において約33倍、フルルビプロフェン製剤よりも薬物血中濃度が上昇することが示されている。さらに本剤はCOX阻害作用がケトプロフェンやロキソプロフェンといった他の貼付剤よりも強いことが示されている。
本剤は添付文書により1日1回の使用とされている。1枚使用時と同時に2枚を使用する時と安全性に差がなく、2枚までの同時使用が認められている。しかし2枚貼付時のAUCと、同剤の内服薬の通常用量を経口投与した時のAUCが同程度に達するため、3枚以上の同時使用は禁止されている。
 本剤使用の約20 %で副作用発現の報告がなされており、最も多いものが適用部位における皮膚炎や紅斑、湿疹などである。本剤はケトプロフェンと異なり、光線過敏症による副作用の報告はなされていない。
本剤は長期間使用しても血清クレアチニン値に大きな変化を与えず、腎機能に影響を与えないことがわかっており、高齢者に多く発症する変形性関節症の治療において有用であるといえる。また貼付剤であるため胃腸障害の発現頻度も内服薬に比較して起こりにくい。したがって変形性関節症の疼痛管理について、本剤を治療のベースとして使用し、疼痛出現時に経口NSAIDsを頓服で利用することが推奨される。
担当者 德淵 晶子

 

 

■ スージャヌ配合錠

平成30年6月12日(火)

[講師]アステラス製薬

 スージャヌ配合錠はDPP-4阻害薬であるシダグリプチンとSGLT2阻害薬であるイプラグリフロジンを配合した血糖降下薬である。シダグリプチンの作用機序は、DPP-4阻害作用により血中内のインクレチン濃度を上昇させ、インスリンの分泌促進とグルカゴン分泌抑制を行う。イプラグリフロジンの作用機序は、SGLT2阻害作用により腎臓でのグルコース再吸収を抑制させ、血液中の過剰なグルコースを体外に排出する。これら2つの作用により血糖値を降下させる。
 効能・効果は2型糖尿病であるが、シダグリプチン、およびイプラグリフロジンの併用による治療が適切と判断される場合に限る。とされており、本剤を2型糖尿病治療の第一選択薬として用いないこととなっている。
 用法・用量は通常、成人には1日1回1錠(シダグリプチン/イプラグリフロジンとして50mg/50mg)を朝食前または朝食後に経口投与となっている。
 重要な基本的注意としてイプラグリフロジンにより血清クレアチニンの上昇または推定糸球体濾過量(eGFR)の低下がみられることがあり、また腎機能障害のある患者ではシダグリプチンの排泄が遅延し、血中濃度が上昇する恐れがある。したがって腎機能を定期的に検査するとともに、腎機能障害患者における治療にあたっては経過を十分に観察することとなっている。
担当者 川渕 崇弘

 

 

■ アレサガテープ

平成30年6月19日(火)

[講師]久光製薬

アレサガテープ(エメダスチン酸塩経皮吸収型製剤)は「TDDS(Transdermal Drug Delivery System:経皮薬物送達システム)技術を用いて開発した全身性のテープ剤で、安定した血中薬物濃度を維持し効果を持続させることが期待されるアレルギー性鼻炎治療薬である。
本剤は①ヒスタミンH1受容体に対する高い親和性②抗ヒスタミン作用③肥満細胞や白血球からのケミカルメディエーター遊離抑制作用④好酸球遊離抑制作用の4つの作用を介してアレルギー性鼻炎を抑制する。
通常、成人にはエメダスチンフマル酸塩として1回4mgを胸部、上腕部、背部、腹部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替える。なお、症状に応じて1回8mgに増量できる。
主な副作用は適用部位紅斑(10.9%)、適用部位掻痒感(4.5%)、適用部位丘疹(2.0%)および眠気(4.9%)であった。
本剤の貼付による皮膚刺激等の副作用を避けるためにも、貼付箇所を毎回変更することが重要である。
担当者 松岡 里於

 

 

■ エクメット配合錠

平成30年6月26日(火)

[講師]

エクア錠(一般名:ビルダグリプチン)は選択的DPP‐4阻害作用を有する2型糖尿病治療薬であり、第Ⅱ相試験において、エクア錠50㎎1回1錠1日2回の投与でHbA1c低下効果を示した。単剤投与でもHbA1c低下効果は示すが、メトホルミンとの併用でより優れたHbA1c低下効果を示すことが分かっている。エクアのDPP‐4阻害作用とメトホルミンの活性型GLP-1濃度上昇効果により、2剤併用でより優れた血糖低下作用を発揮すると考えられる。

エクアとメトホルミン2剤の成分を含有する薬剤がエクメット配合錠であり、エクメット配合錠LDはビルダグリプチン50㎎とメトホルミン250㎎(HDは500㎎)を含有する。エクアとメトホルミンを併用している患者においては、2剤を併用するよりも配合剤に切り替えることで1回の服用薬剤数が減り、アドヒアランスの向上が期待できる。

エクメット配合錠の使用上の注意点としては、メトホルミンを含有するためヨード造影剤を使用する際は投与を一時中止し、ヨード造影剤投与後48時間は投与を再開しないことが挙げられる。

担当者 林 伊津美
■ ルセフィ錠

平成30年5月1日(火)

[講師]大正富山医薬品株式会社

ルセフィ錠(一般名:ルセオグリフロジン)は、2型糖尿病に適応を有する選択的SGLT-2阻害剤である。SGLT-2阻害剤は腎臓の近位尿細管においてグルコースの再吸収を担うナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose cotransporter 2 ; SGLT2)の活性を阻害し、血中の過剰なグルコースを尿中に排泄することで血糖値を低下させる。
腎機能は加齢とともに低下し、薬物療法開始時、2型糖尿病患者の6割以上に腎機能低下がみられる。臨床薬理試験において、中等度の腎機能低障害(eGFR:30~59mL/min/1.73m2)まではルセフィ錠の薬物動態パラメータ(eGFR)の上昇は認められないという結果が得られた。このことから、ルセフィ錠は腎機能低下患者においても使用しやすい薬剤であるといえる。
ただ、ルセフィ錠の投与によって血清クレアチニンの上昇又はeGFRの低下がみられることがあるため、腎機能低下患者は定期的に腎機能検査を行うことが推奨される。また、本剤の利尿作用により多尿・頻尿がみられたり、体液量が減少したりすることがあるため、適度な水分補給を行うよう指導する必要がある。
担当者 林 伊津美

 

 

■ プレセデックス注

平成30年5月8日(火)

[講師]丸石製薬

プレセデックスは一般名をデクスメデトミジンというα2受容体作動性の鎮静剤である。本剤は、作用部位である青斑核以外のα2受容体にも作用することから、心拍数の低下や血圧の低下などの副反応が生じると考えられている。副反応について、負荷投与中は血圧の上昇が起こりやすく、維持投与中は血圧の低下や徐脈が起こりやすいとされており、投与中は患者のバイタルサインの観察が重要となる。一方で、脊髄に存在するα2受容体にも作用するため、痛みを抑制する効果が期待される。
ICU患者がせん妄を発症することにより、予後が増悪し、ICU入室期間の延長や入院期間の延長、認知機能障害が引き起こされることが示唆されている。せん妄発症を抑えるために、ICUの環境の整備はもちろん、使用する薬剤の選択も重要となる。本薬剤は、GABA受容体作動薬であるベンゾジアゼピン系薬剤やプロポフォールと異なる作用機序であることから、より生理的な鎮静効果を期待することができる。さらに、鎮静中であっても刺激により容易に覚醒する脳派パターンを示すことかわかっている。このように、本薬剤は睡眠動態をより自然なものにし、せん妄発症のリスクを低下させ、患者の生存率を増加させることが示唆されており、鎮静目的の薬剤として選択的に使用することは有用であるといえる。
担当者 德淵 晶子

 

 

■ アトーゼット配合錠

平成30年5月18日(金)

[講師]MSD

 アトーゼット配合錠はHMG-CoA還元酵素阻害剤であるアトルバスタチンと小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブの配合錠である。第Ⅲ相臨床試験においてエゼチミブ又はアトルバスタチン単剤療法でLDL-コレステロールの脂質管理目標値に達していない日本人高コレステロール血症患者にアトーゼット配合錠を投与する長期投与試験が行われ、アトルバスタチン単剤療法でLDL-コレステロール管理目標値未達成の患者において、さらなるLDL-コレステロール低下効果を示した。
効能・効果は高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症である。効能・効果に関連する使用上の注意として、1.本剤を高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症の治療の第一選択薬として用いないこと。2.適用の前に十分な検査を実施し、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症であることを確認した上で本剤の適応を考慮すること。3.ホモ接合体家族性コレステロール血症については、LDLアフェレーシス等の非薬物療法の補助として、あるいはそれらの治療法が実施不能な場合に本剤の適用を考慮することとなっている。
用法・用量は通常、成人には1日1回1錠(エゼチミブ/アトルバスタチンとして10mg/10mg又は10mg/20mg)を食後に経口投与することとなっている。使用上の注意として、アトルバスタチンは主として肝臓の薬物代謝酵素CYP3A4により代謝されるためCYP3A4阻害作用のある、テラプレビル、オムビタスビル、パリタプレビル、リトナビル等の薬剤とは併用禁忌となっている。
担当者 川渕 崇弘

 

 

■ フィコンパ錠

平成30年5月22日(火)

[講師]エーザイ株式会社

フィコンパ錠(ペランパネル水和物製剤)はシナプス後膜のAMPA受容体に選択的に作用する抗てんかん薬である。

AMPA受容体は、脳や脊髄の中枢神経に広く分布している受容体で、てんかん波の発生並びにシナプスを介した伝播に重要な役割を持つ。本剤はグルタミン酸によるシナプス後膜のAMPA受容体の活性化を阻害し、神経の過剰な興奮を抑制することでてんかん発作を抑制する。既存の抗てんかん薬と作用点が異なる薬剤のため、他の抗てんかん薬で十分な効果が認められていないてんかん患者の多剤併用療法に用いられている。

フィコンパ錠はその作用機序から脳卒中後てんかん発作にも効果を発揮することが期待されている。脳卒中により虚血となった患者の脳内では、グルタミン酸がシナプス前膜から放出されるだけでなく、それ以外の機構によってもグルタミン酸濃度が高まっている。そのためAMPA受容体を阻害する本剤は、前シナプスに作用する薬剤を使用しても発作が再発する場合の併用治療薬として非常に合理的であるといえる。

通常、成人及び12歳以上の小児にはペランパネルとして1日2mgの就寝前経口投与より開始し、その後1週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増する。(1日最高12mgまで。)本剤の代謝を促進する抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトイン)を併用しない場合の維持用量は1日1回8mg、併用する場合の維持用量は1日8~12mgとなっている。

担当者 松岡 里於

 

 

■ 五苓散

平成30年5月29日(火)

[講師]ツムラ

五苓散はアクアポリン(AQP)を介した水分代謝調節作用と抗炎症作用を示す漢方薬であり、配合生薬は沢瀉・猪苓・蒼朮・茯苓・桂皮の5剤である。

AQPは水分子を選択的に通過させ、細胞膜の水透過性を促進する水チャネルであり、五苓散はこのAQPを阻害することで、浸透圧バランスが崩れた時に生じる異常な水の移動を抑制し水分代謝を調節する効果をもつ。五苓散はフロセミドのような電解質の再吸収を阻害することで利尿作用を示す利尿剤とは違い、血漿の電解質濃度に影響を与えず尿量を増加させることができる。

さらに、通常の利尿剤とは違い脱水状態では尿量増加を示さず、水分保持に働くことで水分代謝のバランスを保つことができる。このような効果から、透析患者に生じやすい筋痙攣に対して有用な治療法・予防法の1つになることが示唆されている。

 

また、AQPのうち腎臓、脳、消化管、内耳等に存在するAQP3,4,5は炎症反応を増強させる作用をもっており、五苓散はこの作用を抑制することで抗炎症作用を示す。

浮腫は炎症反応の結果として生じることが多く、五苓散が脳浮腫や慢性硬膜下血種に対して効果を示すのは、水分代謝調節作用だけでなく抗炎症効果も示すという特徴をもつためであると考えられる。

担当者 高瀬 真依