勉強会

福岡記念病院の勉強会のレポートをご紹介します。

 
■ トルリシティ皮下注0.75mgアテオス
平成28年11月 1日(火)
[講師]大日本住友
トルリシティ皮下注(デュラグルチド)は持続性GLP-1受容体作動薬であり2型糖尿病に適応をもつ。トルリシティは優れたHbA1c低下効果をもち、海外第Ⅲ相臨床試験において、DPP-Ⅳ阻害剤のシタグリプチンに対する非劣性および優越性を示している。また、副作用で問題となる低血糖の発現頻度はシタグリプチンと大きな差はなかった。そのほか問題となる副作用として悪心・吐気が挙げられるが、これらは投与初期に生じ、使用を続けていくうちに治まることが多いとされている。
本剤は肝機能、腎機能低下患者においても用量調節の必要がない。また、週1回投与の薬剤であるため、注射針加算が不要であり、在宅自己注射管理料が低減されるというメリットもある。操作方法は簡便で3ステップで済むため、自己注射未経験で自己注射の操作が困難だと思われる患者においても使いやすい薬剤だといえる。

担当者 高瀬 真依


■ プリズバインド®静注液2.5g
平成28年11月8日(火)
[講師]日本ベーリンガーインゲルハイム
プリズバインド®静注液2.5g(一般名:イダルシズマブ(遺伝子組換え))は経口抗凝固薬のプラザキサ®(一般名:ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)を特異的に中和する、日本初のDOACに対する特異的中和剤である。
本剤はプラザキサ®の成分であるダビガトランに特異的に結合し、血液凝固・線溶系に影響を与えずに抗凝固作用を中和する。また本剤の作用はプラザキサ®よりも大きいため、投与直後から中和し、4時間後にはほぼ100%中和していることが報告されている。
プラザキサは心房細動患者における脳卒中や全身性塞栓症の発症予防として医療現場で活躍している。しかし心房細動患者の大半が高齢者で、転倒・転落等による出血リスクが懸念されること、他にも緊急手術を必要とする際の備えとして医療現場では中和剤の必要性が高まっていた。迅速に中和作用を示すプリズバインドの開発は、プラザキサ®服用患者だけでなく新たに服用開始する患者の安心感を高め、さらに広く医療現場での活躍が期待される。

担当者 糸井 菫


■ タケキャブ錠
平成28年11月15日(火)
[講師]武田薬品
タケキャブ錠はカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive Acid Blocker:P-CAB)と呼ばれる新しい作用機序の酸関連疾患治療剤である。作用機序として、胃壁細胞におけるH+, K+-ATPase(プロトンポンプ)をカリウムイオンと競合的に阻害することによって速やかで強く持続的な酸分泌抑制作用を示す。
タケキャブ錠は即効性、持続性、ピロリ除菌率において、従来のプロトンポンプ阻害薬(Proton pump inhibitor:PPI)よりも有用性が高いことが示されている。PPIは酸による活性化が必要であるため、血中濃度が安定し効力を発揮するまで3~4日必要であるが、タケキャブ錠は酸による活性化が必要ないため投薬1日目から強力な酸分泌抑制作用を有する。また、PPIは酸性環境下では不安定であるため分泌細管に長く留まることができないが、タケキャブ錠は酸性環境下でも安定なため分泌細管に集積して長時間残存する。この性質によって、血中薬物濃度の低下後に新たな分泌細管の膜上へ移動してきたプロトンポンプも阻害することができるため、速やかで優れた分泌抑制作用を示すと考えられる。さらにピロリ菌に対する除菌率において、タケキャブ錠を使用した一次除菌の成功率は92.6%であり、タケプロン錠を使用した際の成功率75.9%よりも有意に高いことが報告されている。PPIは代謝酵素のうち主にCYP2C19で代謝され、このCYP2C19は人によってその代謝能力に差があり、特に日本人は個人差が大きいとされている。タケキャブ錠は主にCYP3A4で代謝されるため、人によって効果のばらつきが少なく、誰に対しても一定の効果が得られるとされている。

担当者 内田 佳菜子


■ マリゼブ錠、ベルソムラ錠
平成28年 11月22日(火)
[講師]MSD株式会社
マリゼブ錠はオマリグリプチンを有効成分とする持続性選択的DPP-4阻害剤である。投与量の約74%が未変化体として尿中排泄され、その大部分が尿細管にて再吸収され、体内循環を繰り返すことにより、効果が持続する。海外第Ⅰ相試験で投与後7日間にわたって約90%と優れたDPP-4阻害率を示しており、投与後14日目でも50%のDPP-4阻害率を示したとの報告もある。長時間にわたって作用を示すため用法は1週間に1回オマリグリプチンとして25mgを服用となっている。腎機能が重度、末期腎不全の患者は12.5mgと半量に減量して服用する必要がある。主な副作用は低血糖症や便秘などがある。12月1日より長期処方が可能となったため、服用方法や低血糖症状発現時の対応等、薬剤師としても分かりやすい説明が求められる。
ベルソムラ錠はスボレキサントを有効成分とする不眠症治療薬である。ベルソムラはベンゾジアゼピン系やGABA受容体作動薬と異なるオレキシン受容体拮抗作用を有している。オレキシン濃度は日内変動を示し、活動期が始まると徐々に増加し、休息期が始まると低下していくことが知られている。このことからオレキシンは覚醒と睡眠に関与していることが知られている。そのため、ベルソムラは生理的に覚醒状態から睡眠状態へ移行させることができ、速やかな入眠と良好な睡眠維持に効果があるといわれている。
また、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系等ではナルコレプシーの副作用が報告されているが、現在のところベルソムラでは報告がない。そのため、不眠治療薬の選択肢の一つとして期待できる薬剤であるといえる。

担当者 藤丸 亮


■ シムビコートタービュヘイラー
平成28年11月29日(火)
[講師]アステラス製薬
シムビコートはステロイド(ブデソニド)と長時間作動型β刺激薬(ホルモテロールフマル酸塩水和物)の合剤による吸入剤である。SMART療法といわれる、シムビコートの定期吸入に加え、発作症状発現時にもシムビコートを追加吸入することが可能である。また、粒子径が小さく、親水性が高いため、速やかに気道粘膜に到達すると考えられる。
SMART療法を実施することにより、喘息発作治療薬の使用回数を有意に減少させたという臨床データや、気道炎症の指標であるFeNOを有意に低下させたという臨床データがある。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者にも使用することができるが、1回2吸入、1日2回の用法のみで、増悪時の急性期治療を目的として使用する薬剤ではないので注意が必要である。
慢性の咳嗽で受診した患者さんのうち、約70%は喘息に関連した咳嗽と診断されており、これからの冬場で増悪する喘息患者への使用が期待できる。

担当者 加留部 綾子
■ インスリングラルギンBS注ミリオペン「リリー」
平成28年10月4日(火)
[講師]日本イーライリリー
インスリングラルギンBS 注ミリオペン「リリー」(一般名:インスリングラルギン(遺伝子組換え)は持効型のインスリンアナログ製剤である。本剤は日本初となるインスリン製剤のバイオシミラー(バイオ後続品)で、先発品であるランタス注ソロスターと同じアミノ酸配列を有する。
バイオシミラーとは、国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(先行バイオ医薬品)と同等・同質の品質、安全性および有効性を有する医薬品として開発され、複雑な分子構造かつ生物を用いた遺伝子組み換え技術や細胞培養技術により製造される医薬品であり、先行バイオ医薬品よりも薬価が安いという特徴を持つ。一方、ジェネリック医薬品は、単純な構造かつ化学合成により製造される低分子医薬品であり、バイオシミラーとは異なる位置づけをされている。

担当者 内田 佳菜子


■ モーラスパップXR120mg
平成28年10月11日(火)
[講師]久光製薬
モーラスパップXR120mgは経皮鎮痛消炎剤で、腰痛症の鎮痛・消炎、および関節リウマチにおける関節局所の鎮痛に適応をもつ初めてのパップ剤である。
 パップ剤は、基剤に水分を含んだ構造であるため、冷感があり、テープ剤に比べて急性期の痛みに効果的である。加えて、パップ剤は一度貼ってしまっても再度貼り直しができるため、テープ剤が扱いづらかったご高齢の方等に適している。その上、他のパップ剤と比べてモーラスパップXR120mgは高い粘着力も示しているため、長時間の貼付が可能であり、1日1回の貼付で効果が持続する。
 冷感を望む方や、テープ剤やほかのパップ剤ではすぐに剥がれてしまう方、そして腰痛症、関節リウマチの患者様でパップ剤を希望されている方にモーラスパップXR120mgは適した貼付剤である。

担当者 国武 香奈


■ サムスカ錠について
平成28年10月18日(火)
[講師]大塚製薬
サムスカ(トルバプタン)錠は、バソプレシンV2受容体拮抗作用により電解質排泄増加を伴わずに過剰な水分を排出する利尿剤である。ループ利尿薬等で効果不十分な心不全・肝硬変における体液貯留、常染色体優性多発性のう胞腎に対して適応をもつ。
副作用として過剰な水利尿による高Na血症があるため、高Na血症の患者には禁忌となっている。
また、急激な血清ナトリウム濃度の上昇により橋中心髄鞘崩壊症をきたすおそれがあることから、入院下で投与を開始又は再開し、血清ナトリウム濃度を投与前、投与4~6時間後、8~12時間後、24時間後、2日目以降から1週間程度は毎日1回測定することが推奨されている。
心不全患者の治療では水分制限を行うことがあるが、高ナトリウム血症や脱水といった副作用発現防止のため、水分制限を緩和し、口渇を感じた場合は水分を摂取するように患者に指導することが重要となる。

担当者 高瀬 真依


■ プラルエント皮下注
平成28年10月25日(火)
[講師]サノフィ株式会社
アリロクマブ(プラルエントⓇ)はヒト型モノクローナル抗体であり、PCSK9(プロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)に特異的に結合することにより、LDL受容体の分解を阻害してLDL受容体数を増加させる薬剤である。LDL受容体が増加することで肝細胞へのLDL取り込みが促進され、血中LDLコレステロール値が低下する。
適応となるのは、心血管イベントの発現リスクが高く、スタチン製剤で効果不十分な患者となっている。また、スタチンはその最大耐用量を服用している必要があるとされている。スタチンは、LDL受容体だけでなくPCSK9も増加させることが知られており、このことがスタチンを増量しても効果が上がらない原因であると考えられている。そのため、スタチンに本剤を併用することでより厳格な脂質コントロールが可能になると期待される。
2週に1回投与する皮下注射剤であり、現在は自己注射の適応はないため医療機関への受診が必要となっている。
主な副作用は注射部位反応であり、その多くは投与12週後~24週後に発現した。

担当者 西村 京子