薬局勉強会

福岡記念病院の薬局では、毎週1つの薬剤について徹底的に理解するための勉強会を行っています。 ここでは、勉強会のレポートを公開しています。

 
■ イグザレルト錠
平成29年8月1日(火)
[講師]バイエル薬品
 イグザレルト錠(一般名:リバーロキサバン)は、選択的直接作用Xa因子阻害剤であり、①非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制、②深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症の治療および再発抑制に適応を持つ。
 心房細動の有病率は高齢者に多いことに加え、腎機能低下や合併症の有無など、その背景は多様性に富んでいる。そのため、治療薬について、治験などの限られた患者集団・条件下の試験だけでなく、実臨床を反映したデータを集積することが特に重要であるといえる。イグザレルトは、「非弁膜症性心房細動(NVAF)における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制」に対する使用実態下における安全性・有効性に関する情報収集を目的として、XAPASSという特定使用成績調査が行われており、約1万例という国内最大規模の実臨床データが得られ、約5000例の日本人高齢者における良好な使用成績が得られている。用法・用量は、NVAFにおける虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制については15mg/日(1日1回)である。腎機能に応じた用量調節が必要であり、Ccr50ml/min未満であれば10mg/日(1日1回)に減量する。深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症の治療および再発抑制については、発症後初期3週間は30mg/日(1日2回)、その後15mg/日(1日1回)を基本とする。

担当者 坂本 佳子


■ オノアクト点滴静注用
平成29年8月8日(火)
[講師]小野薬品
 オノアクトは短時間作用型β1遮断薬であり、「手術時および手術後の循環動態監視下における頻脈性不整脈に対する緊急処置」の効能効果が承認されていた。2013年11月、これらに加え、新たに「心機能低下例における頻脈性不整脈(心房細動、心房粗動)」への効能・効果が追加された。本剤の大きな特徴は調節性に優れ、速やかな除脈効果が期待できるということである。(ヒトでの血中薬物濃度半減期:約4分)また、心機能低下例での副作用発現率は8.6%であり安全性の高い薬剤だと言える。心機能低下例に使用する際は、ランジオロール塩酸塩として1μg/kg/minの速度で静脈内持続投与を開始する。投与中は心拍数、血圧を測定し1~10μg/kg/minの用量で適宜調節する。手術中および手術後の用量に比べ低い用量になっているため注意が必要である。本剤を漫然と継続することは避けるべきであり、患者の状態に応じて経口β遮断薬への切り替えを考慮する必要がある。

担当者 松岡 里於


■ ボンヒバ錠100mg、ボンヒバ静注1mgシリンジ
平成29年8月15日(火)
[講師]中外製薬株式会社
 ボンヒバ錠、ボンヒバ静注はイバンドロン酸ナトリウムであり、骨粗鬆治療薬として用いられている。今回、ボンヒバ静注の国内第Ⅱ/Ⅲ相試験(経口リセドロネートを対照とした非劣性試験)とボンヒバ錠の国内第Ⅲ相試験(ボンヒバ静注を対照とした非劣性試験)が行われた。
 今回の試験によりボンヒバ静注はリセドロネートよりも大腿骨頚部骨密度を増加させること、ボンヒバ錠は大腿骨頚部骨密度をボンヒバ静注と同様に増加させることが明らかになった。これにより、ボンヒバの有効性が明らかになった。また静注、錠剤ともに同等の効果が期待できることも明らかになった。剤形が複数存在する薬剤であるため、患者が服用しやすい方を選ぶことができ、患者のアドヒアランスの向上につながると思われる。ボンヒバ錠の用法用量は、通常、成人にはイバンドロン酸として100mgを1か月に1回、起床時に十分量(約180ml)の水とともに経口服用する。なお、服用後少なくとも60分は横にならず、飲食およびほかの薬剤の経口摂取を避けること。となっている。服用条件が厳しい薬剤なので患者がきちんと服用できているか、副作用が起きていないかの確認を頻繁に行う必要がある。

担当者 川渕 崇弘


■ ディレグラ配合錠
平成29年8月22日(火)
[講師]サノフィ
 ディレグラ配合錠はフェキソフェナジン塩酸塩と塩酸プソイドエフェドリンの配合錠である。フェキソフェナジンは第二世代の抗ヒスタミン薬であり、プソイドエフェドリンはα受容体遮断薬である。フェキソフェナジンは、商品名:アレグラ錠として現在の臨床の現場において広く使用されており、くしゃみや鼻汁を抑える効果を持つ。一方、本剤はプソイドエフェドリンを含有しているため、アレグラ錠と比較して有意に鼻閉を改善することが示されている。以下、アレグラ錠と本剤の比較を行いその特徴について記載する。まず、第一に効能・効果が異なる。アレグラ錠は「アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、 皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)に伴うそう痒」といった全身に生じるアレルギー症状に対して効果が認められているが、ディレグラ錠ではアレルギー性鼻炎のみの適応となっている。次に、アレグラ錠はフェキソフェナジン塩酸塩として1 回60 mg を1 日2 回経口投与となっているが、ディレグラ錠は1 回2 錠を1 日2 回、朝及び夕の空腹時に経口投与となっている。また、α受容体遮断薬を含むことにより使用上の注意が多数あるため、使用時には患者の既往歴や服用中の薬剤を確認する必要がある。最後に本剤の投与後、糞便中に殻が混入することがあるため、指導時に注意を促す必要がある。

担当者 徳淵 晶子


■ ベルソムラ錠、マリゼブ錠
平成29年8月29日(火)
[講師]MSD株式会社
「ベルソムラ錠」オレキシン受容体拮抗薬作用を有する不眠症治療薬である。ベルソムラ錠の使用成績調査の中間報告において、不眠症改善率は74%であった。使用理由別の改善率は入眠困難、中途覚醒、早期覚醒いずれにおいても70%以上の患者で改善したという高い効果が得られた。以上のことから、ベルソムラ錠は不眠症治療において有用な薬剤であると考えられる。副作用発現症例率は安全性解析対象例747例中8.8%(85例)で、傾眠が3.0%(22例)と最も多かった。注意点として、他の不眠症治療薬の使用状況によってはその効果に影響が及ぶ場合があるため、不眠症治療薬の使用がない状態、またはベルソムラ初回投与開始前14日以内に、既存の不眠症治療薬の使用を変更しない状態においてベルソムラを使用することが望ましい。
「マリゼブ錠」持続性選択的DPP-4阻害作用を有する経口糖尿病治療薬であり、持続的にDPP-4阻害作用を示すため週一回の服用で良いという特徴をもつ。マリゼブ錠は第Ⅲ相臨床試験において、週一回投与でプラセボと比較して優れたHbA1c低下効果を示し、投与7日後においても良好な血糖低下効果を示した。また、海外第Ⅰ相臨床試験において投与後7日間にわたって約90%という高いDPP-4阻害率を示した。以上のことから、マリゼブ錠は経口糖尿病治療薬として優れた効果を示すといえる。また、アドヒアランスに関し、特定使用成績調査で98%以上の患者が正しく服用できたという結果が得られた。このことから、連日投与製剤と比較して、患者の服薬負担軽減やアドヒアランスの向上が期待できるという利点も有する。使用上の注意は、腎機能低下患者にも使用することができるが腎機能に応じて用量調節が必要であり、重度の腎機能障害患者には慎重投与となる点があげられる。また、投与中止後も作用が持続するため、血糖値や副作用発現に注意しながら使用していく必要がある。

担当者 林 伊津美



■ プリズバインド静注液2.5g
平成29年7月4日(火)
[講師]日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
 プリズバインドは抗凝固薬ダビガトラン(プラザキサ®)の中和剤であり、直接的経口抗凝固薬(DOAC)に対する唯一の中和剤である。本剤は生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時や、重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時におけるダビガトランの抗凝固作用の中和に適応をもつ。プリズバインドはダビガトランに対して特異的に結合し、投与後速やかに抗凝固作用を中和する。また、ダビガトランの抗凝固作用の中和以外に凝固促進作用や抗凝固活性を示さず、血液凝固・線溶系に影響を与えないという特徴がある。本剤の投与によりダビガトランの抗凝固作用が中和され、血栓症のリスクが増加するため、止血後は速やかに適切な抗凝固療法の再開を考慮する必要がある。なお、ダビガトランの投与は本剤の投与から24時間後に再開可能であり、他の抗凝固薬の投与は本剤投与後いつでも可能である。
 抗凝固薬服用中の患者は出血傾向に注意が必要であるが、緊急の出血時にも速やかに効果を発現する中和剤が存在することで、ダビガトランのよりいっそうの使用が期待される。

担当者 林 伊津美


■ レクサプロ錠
平成29年7月11日(火)
[講師]田辺三菱製薬
 レクサプロ錠は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、うつ病・うつ状態、社会不安障害に適応をもつ。初回から治療用量である10mg/日の投与が可能であるため、少量から漸増する必要がない。また、1回の増量で最大用量である20mg/日の投与が可能で、複数回漸増することなくすみやかに最大用量を投与できる。レクサプロ錠の大きな特徴は、従来のSSRIに比べ効果の発現が早いことであり、投与後約1週間で効果発現が期待できる。また、脳内移行性が高く、下痢、口渇などの副作用が少ないため、患者のQOLを高めることができる。さらに、CYP阻害作用が弱く、他の薬剤と併用しやすいという特徴も併せ持つ。以上のことから、レクサプロ錠はうつ病治療における第一選択薬の抗うつ薬として有用な選択肢となりうる。

担当者 松岡 里於


■ フィコンパ錠
平成29年7月18日(火)
[講師]エーザイ株式会社
 フィコンパ錠(一般名:ペランパネル水和物)は、興奮性神経系であるグルタミン酸作動性シナプス後膜に存在するAMPA受容体に拮抗して作用する抗てんかん薬である。他の抗てんかん薬で十分な効果が得られないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)、強直間代発作に適応を持ち、他の抗てんかん薬と併用して用いる。本剤は、成人及び12歳以上の小児に対して1日1回2mgの就寝前経口投与より開始し、その後1週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増する。本剤の代謝を促進する抗てんかん薬を使用しない場合の維持用量は1日1回8mg、併用する場合の維持用量は1日1回8〜12mgである。てんかん発作の重要な要因として、服薬中の抗てんかん薬の急激な中断と、脳卒中が報告されている。
 ペランパネルの薬物動態学的モデリングの海外データによると、ペランパネルの長い半減期(約105時間)により1日1回投与で比較的平坦な血中濃度推移を示すこと、また、投与開始後15日目の飲み忘れによる大きな血中濃度の変動を起こさないことが報告されている。てんかん発作は1回の飲み忘れで発作に至ることも少なくなく、1日1回の投与で安定した血中濃度推移を得られるフィコンパ錠は、服薬アドヒアランス不良患者に対する新たな選択肢と言える。また、脳卒中により虚血状態になった患者の脳内では、グルタミン酸がシナプス前部から放出されるだけでなく、グルタミン酸トランスポーターの逆輸送によってもグルタミン酸濃度が高まっている。ペランパネルは、グルタミン酸の受け手となるAMPA受容体をブロックするため、前シナプスに作用する薬剤を使用しても発作が再発する場合、次の併用治療薬として合理的な選択である。本剤の使用禁忌として、成分への過敏症の既往歴のある患者と、重度の肝機能障害のある患者が添付文書に記載されている。重大な副作用として攻撃性が挙げられている。

担当者 坂本 佳子


■ ツムラ六君子湯、ツムラ清暑益気湯、ツムラ補中益気湯
平成29年7月25日(火)
[講師]株式会社ツムラ
「ツムラ六君子湯」胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちのつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの食欲不振、胃炎、消化不良に用いられる。機能性ディスペプシア患者において上腹部症状や食欲不振の改善が認められている。胃切除後のうっ滞症状(上腹部膨満感、不快感、痛み、逆流、空腹感の喪失)を改善する。主な副作用は、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、黄疸など。
「ツムラ清暑益気湯」暑気あたり、暑さによる食欲不振・下痢・全身倦怠感、夏やせに用いられる。暑さによる食欲不振、全身倦怠感に対する臨床成績が報告されている。高温多湿負荷モデルマウスの体重減少抑制作用が報告されている。主な副作用は、偽アルドステロン症、ミオパチーなど。
「ツムラ補中益気湯」消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の症状:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症に用いられる。消耗性疾患、病後における低下した体力の増強、食欲不振、疲労倦怠感に効果がある。免疫調節作用(NK細胞活性化、骨髄機能低下抑制、サイトカイン産生増強 等)を有し、生体防御機能を賦活する。主な副作用は、間質性肺炎、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、黄疸など。

担当者 川渕 崇弘