薬局勉強会

福岡記念病院の勉強会のレポートをご紹介します。

 
■ アミティーザカプセル24μg
平成28年12月6日(火)
[講師]マイランEPD
アミティーザカプセルは慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)の効果を有する世界初のクロライドチャネルアクチベーターである。腸管内への水分分泌を促進することにより、便を軟らかくし、腸管内の輸送を高めて、長期にわたり自然排便を増加させ、慢性便秘症に伴う諸症状を改善する。大崎国保コホート研究によると排便頻度が少ないほど循環器系患者の死亡リスクが増加するという報告があり、便秘症が軽視できない問題であることが分かる。現在わが国で便秘症によく用いられる薬剤のひとつに酸化マグネシウムが挙げられるが、高齢で腎機能の低下した患者にはできるだけ使用を控えたい。高齢者に対する酸化マグネシウムの投与は用法用量の厳守および血清マグネシウムのモニタリングが推奨されており、また刺激性下剤においても、即効性には優れるものの、長期連用による習慣性や薬物耐性に注意が必要であり、頓用など適度な使用の範囲に抑えることが望ましい。そんな中、アミティーザは併用禁忌薬・注意薬はなく、多剤併用となりがちな高齢者にとっては使いやすい。アミティーザをうまく活用し、丁寧な問診と事前の十分な説明を心がけることで日本の慢性便秘症治療の底上げにつなげていくことが期待できる。

担当者 加留部 綾子


■ イグザレルト錠
平成28年12月13日(火)
[講師]バイエル薬品株式会社
イグザレルト錠(一般名:リバーロキサバン)は選択的直接作用型第Xa因子阻害剤である。本剤だけでなく他剤も含め経口第Xa 因子阻害剤は医療現場において様々な貢献をしている。なかでも本剤は日本人のみを対象に第Ⅲ相試験を実施した初めての経口第Xa 因子阻害剤であり、海外で行われた「ROCKET AF試験」だけでなく国内最大規模の前向き試験「J-ROCKET AF試験」においても有効性が確認されている薬剤である。また国内外の臨床試験と実臨床においても一貫した結果が確認されており、エビデンスに基づいた実績がある。このことは医療現場において医療従事者の信頼だけでなく患者の信頼にも繋がり、よりスムーズに薬物治療を開始することができる。
本剤の投与において注意すべき点として、腎機能に配慮した用量設定が挙げられる。非弁膜症性心房細動患者には、CLcrが50mL/min以上であれば15mgを1日1回、49~15mL/minであれば10mgを1日1回、15mL/min未満の場合は禁忌となるため投与の際は注意が必要となる。

担当者 糸井 菫


■ ロコアテープ
平成28年12月20日(火)
[講師]帝人ファーマ
ロコアテープ(エスフルルビプロフェン・ハッカ油製剤)は、強力なCOX阻害作用と優れた組織移行性をもつ経皮吸収型のNSAIDsである。変形性関節症の患者を対象に、52週という長期の臨床試験を行ったところ、開始時と比較して中等度以上の改善がみられた患者は70%以上であった。
 現在、適応は変形性関節症のみである。1日2枚の貼付で全身曝露量がフルルビプロフェン経口剤の通常用量と同程度になるため、1日貼付枚数は2枚を超えないこととなっている。また、本剤投与時は他の経口NSAIDsの併用は可能な限り避けることとし、止むを得ず使用する場合は必要最小限の使用にとどめることとされている。他の局所作用型のNSAIDs貼付薬との併用や、アセトアミノフェンとの併用は問題ない。主な副作用は貼付部位の皮膚炎や紅斑、湿疹であり、臨床試験においてs-Cr値には大きな変動はみられなかった。また、光線過敏症を惹起する骨格は有しておらず、現在のところ報告もなされていない。

担当者 西村 京子


■ フルティフォーム
平成28年12月27日(火)
[講師]杏林製薬株式会社
フルティフォームは炎症を強力に抑えるフルチカゾンプロピオン酸エステルと、気管支を速やかに広げるホルモテロールフマル酸塩水和物を同時に吸入できる加圧噴霧式定量吸入器:pMDIである。以前までは末梢気道・肺胞まで薬剤を到達させるため薬剤の粒子径をいかに小さくするかということに重きを置いていた。しかし、喘息治療は中枢気道+末梢気道・肺胞にまんべんなく薬剤を到達させなければならない。その点フルティフォームは0.8 ~ 5μgの粒子径を含んでおり、中枢気道から肺胞までまんべんなく行き届くように設計されている。また、pMDIのため吸入力が低下した高齢者でも気道の末梢まで薬剤を到達させることができる。吸入力以外にも高齢者の多くは手指筋力低下しているため、より軽い力で押せるフルプッシュという吸入補助器具もある。この吸入補助器具には残量カウンターの文字が大きく見えるようにレンズもついており、吸入が容易になる。

担当者 藤丸 亮
■ トルリシティ皮下注0.75mgアテオス
平成28年11月 1日(火)
[講師]大日本住友
トルリシティ皮下注(デュラグルチド)は持続性GLP-1受容体作動薬であり2型糖尿病に適応をもつ。トルリシティは優れたHbA1c低下効果をもち、海外第Ⅲ相臨床試験において、DPP-Ⅳ阻害剤のシタグリプチンに対する非劣性および優越性を示している。また、副作用で問題となる低血糖の発現頻度はシタグリプチンと大きな差はなかった。そのほか問題となる副作用として悪心・吐気が挙げられるが、これらは投与初期に生じ、使用を続けていくうちに治まることが多いとされている。
本剤は肝機能、腎機能低下患者においても用量調節の必要がない。また、週1回投与の薬剤であるため、注射針加算が不要であり、在宅自己注射管理料が低減されるというメリットもある。操作方法は簡便で3ステップで済むため、自己注射未経験で自己注射の操作が困難だと思われる患者においても使いやすい薬剤だといえる。

担当者 高瀬 真依


■ プリズバインド®静注液2.5g
平成28年11月8日(火)
[講師]日本ベーリンガーインゲルハイム
プリズバインド®静注液2.5g(一般名:イダルシズマブ(遺伝子組換え))は経口抗凝固薬のプラザキサ®(一般名:ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)を特異的に中和する、日本初のDOACに対する特異的中和剤である。
本剤はプラザキサ®の成分であるダビガトランに特異的に結合し、血液凝固・線溶系に影響を与えずに抗凝固作用を中和する。また本剤の作用はプラザキサ®よりも大きいため、投与直後から中和し、4時間後にはほぼ100%中和していることが報告されている。
プラザキサは心房細動患者における脳卒中や全身性塞栓症の発症予防として医療現場で活躍している。しかし心房細動患者の大半が高齢者で、転倒・転落等による出血リスクが懸念されること、他にも緊急手術を必要とする際の備えとして医療現場では中和剤の必要性が高まっていた。迅速に中和作用を示すプリズバインドの開発は、プラザキサ®服用患者だけでなく新たに服用開始する患者の安心感を高め、さらに広く医療現場での活躍が期待される。

担当者 糸井 菫


■ タケキャブ錠
平成28年11月15日(火)
[講師]武田薬品
タケキャブ錠はカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive Acid Blocker:P-CAB)と呼ばれる新しい作用機序の酸関連疾患治療剤である。作用機序として、胃壁細胞におけるH+, K+-ATPase(プロトンポンプ)をカリウムイオンと競合的に阻害することによって速やかで強く持続的な酸分泌抑制作用を示す。
タケキャブ錠は即効性、持続性、ピロリ除菌率において、従来のプロトンポンプ阻害薬(Proton pump inhibitor:PPI)よりも有用性が高いことが示されている。PPIは酸による活性化が必要であるため、血中濃度が安定し効力を発揮するまで3~4日必要であるが、タケキャブ錠は酸による活性化が必要ないため投薬1日目から強力な酸分泌抑制作用を有する。また、PPIは酸性環境下では不安定であるため分泌細管に長く留まることができないが、タケキャブ錠は酸性環境下でも安定なため分泌細管に集積して長時間残存する。この性質によって、血中薬物濃度の低下後に新たな分泌細管の膜上へ移動してきたプロトンポンプも阻害することができるため、速やかで優れた分泌抑制作用を示すと考えられる。さらにピロリ菌に対する除菌率において、タケキャブ錠を使用した一次除菌の成功率は92.6%であり、タケプロン錠を使用した際の成功率75.9%よりも有意に高いことが報告されている。PPIは代謝酵素のうち主にCYP2C19で代謝され、このCYP2C19は人によってその代謝能力に差があり、特に日本人は個人差が大きいとされている。タケキャブ錠は主にCYP3A4で代謝されるため、人によって効果のばらつきが少なく、誰に対しても一定の効果が得られるとされている。

担当者 内田 佳菜子


■ マリゼブ錠、ベルソムラ錠
平成28年 11月22日(火)
[講師]MSD株式会社
マリゼブ錠はオマリグリプチンを有効成分とする持続性選択的DPP-4阻害剤である。投与量の約74%が未変化体として尿中排泄され、その大部分が尿細管にて再吸収され、体内循環を繰り返すことにより、効果が持続する。海外第Ⅰ相試験で投与後7日間にわたって約90%と優れたDPP-4阻害率を示しており、投与後14日目でも50%のDPP-4阻害率を示したとの報告もある。長時間にわたって作用を示すため用法は1週間に1回オマリグリプチンとして25mgを服用となっている。腎機能が重度、末期腎不全の患者は12.5mgと半量に減量して服用する必要がある。主な副作用は低血糖症や便秘などがある。12月1日より長期処方が可能となったため、服用方法や低血糖症状発現時の対応等、薬剤師としても分かりやすい説明が求められる。
ベルソムラ錠はスボレキサントを有効成分とする不眠症治療薬である。ベルソムラはベンゾジアゼピン系やGABA受容体作動薬と異なるオレキシン受容体拮抗作用を有している。オレキシン濃度は日内変動を示し、活動期が始まると徐々に増加し、休息期が始まると低下していくことが知られている。このことからオレキシンは覚醒と睡眠に関与していることが知られている。そのため、ベルソムラは生理的に覚醒状態から睡眠状態へ移行させることができ、速やかな入眠と良好な睡眠維持に効果があるといわれている。
また、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系等ではナルコレプシーの副作用が報告されているが、現在のところベルソムラでは報告がない。そのため、不眠治療薬の選択肢の一つとして期待できる薬剤であるといえる。

担当者 藤丸 亮


■ シムビコートタービュヘイラー
平成28年11月29日(火)
[講師]アステラス製薬
シムビコートはステロイド(ブデソニド)と長時間作動型β刺激薬(ホルモテロールフマル酸塩水和物)の合剤による吸入剤である。SMART療法といわれる、シムビコートの定期吸入に加え、発作症状発現時にもシムビコートを追加吸入することが可能である。また、粒子径が小さく、親水性が高いため、速やかに気道粘膜に到達すると考えられる。
SMART療法を実施することにより、喘息発作治療薬の使用回数を有意に減少させたという臨床データや、気道炎症の指標であるFeNOを有意に低下させたという臨床データがある。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者にも使用することができるが、1回2吸入、1日2回の用法のみで、増悪時の急性期治療を目的として使用する薬剤ではないので注意が必要である。
慢性の咳嗽で受診した患者さんのうち、約70%は喘息に関連した咳嗽と診断されており、これからの冬場で増悪する喘息患者への使用が期待できる。

担当者 加留部 綾子