2017年3月9日に臨床病理検討会を開催しました。
今回は澤田詩朗医師より、80歳代の女性の痙攣重積状態で福岡記念病院へ救急搬送された症例を呈示されました。

臨床経緯は、近隣住民から警察への通報を契機に当院に救急搬送されました。発見時意識不明の状態で全身性の痙攣を伴っていた為近親者がおらず既往歴や服薬歴が不明な状態での治療でした。脳波、CT等を施行し検査所見にて脳浮腫を認め、低酸素脳症、ミオクローヌ癲癇疑いの診断にてレオチラセタムによる治療を行いましたが、24病日に永眠されました。

今回の臨床診断では、頭蓋内に痙攣を来す所見が認められなかった為、痙攣重積発作から低酸素脳症に至るような心循環器や呼吸系の病変、また感染症が認められたかを剖検診断により病理総論に基づいた組織所見を行いました。
病理解剖は、福岡記念病院病理診断科古賀孝臣により執り行われ、体腔に水分が貯留している腔水症の所見を認めました。また、肝臓、脾臓及び腎臓は重量が著明に増加し、組織学的に高度のうっ血も認めました。心臓には多発性の微小心筋壊死巣があり、一部は細菌隗を伴っていました。さらに両肺の間質、一部の肺胞には好中球浸潤が認めました。以上の所見より病理診断においてこの症例の死亡病名は敗血症であると考えられ、副症として心筋の多発性微小壊死が心不全に関与したことが推測されました。

福岡記念病院には病理専門医、病理検査技師が常勤しております。以前に比べより早期に短期間で個々の臓器診断にとどまらない、全身的な病態の所見が可能となりました。医療行為を振り返り、一つの症例から多くを学び取ることを目的とした臨床病理検討会は医療の質向上を図る上では必要不可欠です。今後もより充実した臨床病理検討会を継続して参ります。

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 去る、平成29年2月22日に第18回福岡西部地区医療連携講演会を開催しました。
 今回の講演会は福岡市医師会にご協賛いただき、みやにし整形外科リウマチ科の宮西圭太院長よりご講演をいただきました。
宮西圭太院長は、膝、腰、肩などの関節障害に代表される整形外科疾患や関節リウマチを専門として治療を行われています。また、筋骨格系慢性疼痛について、漢方治療を積極的に行われていることでも著名です。

 会に先立ち、福岡市医師会学術担当を務められておられる三松高一先生よりご挨拶を賜ることができました。
 講演会は、当院外科 城戸英希部長を座長とし、みやにし整形外科での症例をご提示いただきながら、西洋医学と漢方医学(東洋医学)との相違や漢方薬処方のポイントについて、わかりやすくご解説いただきました。
西洋医学は検査結果に基づいて診断・治療を行い理論的であるのが特徴ですが、患者さんより異常の訴えがあっても検査結果で異常がなければ診断・治療ができないという弱みがあります。一方、漢方医学では、患者さんの体格・動作・話口調・舌・お腹など局所ではなく全身的に異常の有無を検索することで、患者さんの体質を判定し治療を行って行くことが特徴で、治療選択が広がるということが強みです。
参加した医療機関の方々からは、痛みが鎮痛剤で取れにくい患者さんの相談や実際に漢方薬を投与する量や期間、用法について沢山の質問があがりました。
 宮西院長は「大切なことは痛む局所だけにとらわれず、全身状態の不調に関して徹底的にお話を聞くこと」「患者さんの体質(イメージを)を判定し、患者さんに合わせた漢方を2~3週程度内服していだき、少しでもいい感じがあれば継続してもらい、もし無効でも次の漢方薬を試すこと」「患者さんの状態が短期間でもっとも効率よく改善できることを最優先に考え、治療に際して漢方薬と西洋薬の両方を提示すること」が必要であるとお答えされました。

 福岡記念病院でも技術だけではなく、笑顔と患者さんに対する真摯な気持ちでの診療をより一層心がけ、医療を通して少しでも多くのやすらぎと安心感を地域の皆様に提供して参ります。

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平成29年1月19日に第187回医療連携のつどいを開催しました。本年初となる医療連携のつどいでは、久留米大学医学部心臓・血管内科より福本義弘教授、中村知久助教をお招きして、福岡西部地区医療連携講演会行いました。
中村先生は、福岡記念病院での臨床研修を経験された後、久留米大学医学部心臓・血管内科に入局されました。本年度は未治療の特発性肺動脈性肺高血圧症に対するエンドセリン拮抗薬による治療介入効果をFDG-PETを用いて可視化し、論文としてまとめられました。この論文は、Journal of Nuclear Cardiologyに掲載される予定です。
今回の講演会では、循環器疾患を専門領域として決められた経緯と迅速な救命対応を必要とする急性心不全においても全身を診ることができる内科医の必要性についてお話しいただきました。講演会には若手医師や研修医も参加しており、中村先生のお話を熱心に聞いていました。
続いて、福本先生より高齢者心不全の治療と病病連携についてご講演いただきました。福本先生は日本心不全学会が公表した「高齢心不全に患者の治療に関するステートメント」作成にもご参加されており、今回の講演では同ステートメントから最新知見の概要とそれぞれの領域における指針についてご解説いただきました。福本先生は「高齢者の心不全の管理では、かかりつけ医による診療体制が主体的な役割を果たし、それを基幹病院が的確な診断と非代償期の入院治療やリハビリテーションにおいて連携、支援する必要がある」と強調されました。また終末期医療に関しては「生命予後延長を目的とした薬物治療よりQOLの改善を優先するべき場合が少なくなく、個人の人生観や希望を取り入れた緩和医療を循環器領域でも推進していく必要がある」とお話しされました。

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今回の講演会には、約150名の連携医療機関の方々にご参加いだくことができました。
高齢化の進展に伴い、医療需要が増大する中で、医療及び介護の総合的な確保のため在宅医療等にも円滑に対応できるよう、人員配置等を調え、介護分野での対応を拡充する必要もあります。福岡記念病院は今年も地域医療構想の策定や実現に向けた取組みに対して各医療機関と連携を図り、地域医療に邁進してまいります

去る、平成28年11月18日に第17回福岡西部地区医療連携講演会を開催しました。今回は熊本大学医学部付属病院糖尿病・代謝・内分泌内科 講師松村剛先生より「最新のエビデンスが導く糖尿病診療UP-TO-DATE」と題し、ご講演いただきました。

糖尿病では、甚だしい血糖上昇により、急性の意識障害を引き起こすこともありますが、その多くは緩徐に進行する臓器障害や糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症などです。これら疾患は、血管の動脈硬化の進行にも関係しており、その結果、致死的な疾患である脳血管障害、心血管障害も引き起こすため、糖尿病の診断と同時に糖尿病合併症検索も行う必要があると話されました。
また、これまでの糖尿病治療薬は膵臓に作用し、最終的にはインスリンを出すことで血糖コントロールを改善するものでしたが、腎臓に作用する治療薬であるSGLT2阻害薬を使用することにより、他の治療薬のメカニズムに影響を与えることなく、尿糖の排泄を増やし、高血糖を改善させる薬物療法についてご解説いただきました。
松村先生は、4月14日に発生した熊本地震の際には避難所でのケア活動に糖尿病チームとして参加され、多くの患者さんや地域の方々、地域医療機関の先生方と接し、改めてコミュニケーションと連携の重要性を感じられたとの事でした。

講演終了後には、SGLT2阻害薬使用のメリットや使用に関する注意点についてなどの質問があり、松村先生は認容性・有用性がわかる患者さんには第一選択としてSGLT2阻害薬を使用することも可能であると話されました。
福岡記念病院では、今後も地域の方々が安心して過ごしていただけるよう、地域医療機関との連携を強化し、知識・技術の向上を図って参ります。


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平成28年10月20日、第2回福岡市西南部大腿骨近位部骨折を考える会を開催しました。座長は整形外科部長 本家秀文が行い、大腿骨近位部骨折に対するリハビリテーションについて3講演いただくことができました。
始めに、急性期病院での大腿部近位部骨折に対するリハビリについて、当院リハビリテーション科坂本大和より、骨折発生から術前のリハビリ介入の有効性や術後、骨癒合までの期間における対する早期荷重のリスク、歩容改善の時期、ベッド上でのポジショニングや運動療法時の注意点など図解を用い詳しく解説しました。

続いて、多職種からなる院内医療チームを連携させた取り組みについて、社会福祉法人誠和会牟田病院リハビリテーション科主任 北嶋優一氏にご紹介いただきました。牟田病院では、退院前の自宅訪問に加え、リハビリ介入前に自宅訪問を行うことで、より効果が期待できる療法の選択を行えるようになり、さらに、多職種で構成された医療チームが連携し介入を行うことで、栄養状態や既往に合わせた効果的なリハビリを提供し、在宅復帰がスムーズに行えているとの事でした。会場からは、自宅訪問についての介入手順や頻度についてなど熱心な質問があり、自院での実例を交えご回答いただきました。

最後に、特定医療法人順和長尾病院 理事長 服部文忠先生より、長尾病院での脳血管障害時におけるリハビリテーションと大腿部近位部骨折におけるリハビリテーションの予後比較結果について報告があり認知症の既往がある場合には腿骨近位部骨折を受傷すると、通常と同じリハビリでは歩行機能回復に差が現れるという結果が発表されました。今後は、認知症患者に対するリハビリテーションのアプローチについて検討をし、患者さんが満足できるリハビリの提供を実施していく必要性があるとの課題を持たれていました。

当日は、会場が満席となるほどの盛会となりました。高齢化が進む中、大腿骨近位部骨折は身近な疾患となりました。患者さんが受傷前と変わらぬ日常生活を再獲得できるよう、急性期病院から回復期における多職種、他医療機関との円滑な連携と地域医療の質の向上を目指し、今後も定期的に「福岡市西南部大腿骨近位部骨折を考える会」を開催して参ります。

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平成28年9月21日に、福岡西部地区医療連携講演会を開催しました。
今回の講演会は、朝霞台中央総合病院脳神経外科・統括部長、脳卒中てんかんセンター・センター長で、東京女子医科大学助教の久保田有一先生をお招きして「急性期から慢性期までのてんかん診療のアップデート」と題しての講演会を行いました。
講演会では、朝霞台中央総合病院が抱える埼玉県東入間地区での、てんかんを既往とした意識喪失搬送症例をご紹介いただきながら、ビデオ脳波モニタリングを用いた確定診断やてんかん発作に対する各種ガイドラインに照らし合わせた薬剤の種類・選択についてご解説いただきました。

また昨今、アメリカで改訂された、てんかん診断のガイドライン解釈についてもお話しいただくことができました。高齢者にとってコモンディジーズであるてんかんについて、ご参加いただいた医療機関の医師からも熱心な質問や相談があり、久保田医師は脳神経救急医として、搬送時直後より脳波検査を実施する必要性や発作時の状況について家族から詳しい聞き取りを行うことの重要性について訴えられました。

医療のニューズも時代と共に変遷してきており、現在、急性期病院には救急疾患を断らない医療から、迅速に搬送を受け入れ質の高い医療を提供することと、専門医療に対して幅広く双方向的なコミュニケーションをする事が求められています。
福岡記念病院でも、より地域医療機関の皆さまが必要とする情報提供やより充実した意見交換が行えるよう取り組みを強化していく次第です。

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去る、平成28年8月23日に西鉄グランドホテルにおいて、第186回医療連携のつどいを開催しました。

今回の医療連携のつどいでは「心血管病フォーラム」と題し、佐賀県医療センター好生館 循環器内科 古閑靖章医長より「クラウドサーバーを利用した12誘導心電図伝送システムを導入して」の講演。さらに、九州大学循環器病未来医療研究センター 先端循環制御学部 廣岡良隆教授を座長にお迎えして、産業医科大学第2外科 園田信成准教授より「冠動脈インターベンション治療 UP TO DATE」の2講演を行いました。

佐賀県医療センター好生館で導入された、クラウドサーバーを利用した12誘導心電図伝送システムは、救急隊への指導も実施することにより、緊急症例に対してより効果的な救急救命が実施されているとの報告を受けました。福岡市内においてもこのシステムを救急現場へ普及させ、急性心筋梗塞患者の救命率向上に貢献することが期待されます。

次に、園田信成准教授より冠動脈インターベンション治療にて使用ステントやその手技について詳細にご解説いただき、内皮化を促進し完全なベアメタルステントとなる生分解ポリマーや生体吸収性スキャホールドのご紹介、IVUSガイドを用いることで、PCIの手技が劇的に変化していることについてのお話しをいただきました。

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また、情報交換会では、ご出席いただきました関連医療機関の皆さまと地域医療構想についての施設方針や取り組み、診療機能転換などについて密に語りあうことができました。今後も、急性期医療機能を担う病院としての重責を感じ、地域医療機関の皆さまと連携することで、地域住民の暮らしを支える医療提供を行っていく次第です。

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平成28年6月23日に臨床病理検討会を開催しました。
今回のCPCは、「消化管出血で死亡し、抗NMDA受容体陽性であった一例」について検討を行いました。

症例は脳神経内科 田代典章医師より、「30代男性、意識レベルJCSⅠ-3にて救急搬送、5日前より全身の倦怠感、発熱があり近医にて抗菌薬、消炎鎮痛剤を処方されていた。搬送時の所見では項部硬直や麻痺などの異常は認められなかったが、錯乱状態にありバイタル、瞳孔確認は困難であった。
第1病日よりプロポフォールによる鎮静下による治療を開始した。検査の結果、抗NMDA受容体陽性であり二次性脳炎を起こしているものと推測された。第2病日より気管挿管、第4病日には血漿交換を開始し、第6病日には維持透析を開始するも部分発作は持続的に出現し、第9病日には黒色便あり、消化管出血により死亡に至った」との経緯報告を受けました。

考察では、CKの著明な上昇原因がプロポフォール症候群によるものだけであるか、抗NMDA受容体陽性でグリオーシス、ミクログリアなどの脳炎所見の有無、消化管出血を起こすに至った要因について検討が行なわれました。

統括は、九州大学大学院研究科形態機能病理学教室 岩﨑健医師より行なわれ、「今回の症例は、脳内での炎症所見はないものの、海馬、延髄部で微量出血を認め、またアクティブではないものの鉤ヘルニアも認めた。さらに小腸大腸も黒色化しており僅かに潰瘍性病変もあった」との剖検報告がありました。
また、岩﨑医師は、搬送時搬送時には79.0kgであった体重が、剖検時には93.9kgであり、各臓器にも浮腫が認められた点にも着目され横絞筋融解症から腎不全を起こしていた可能性についても示唆されました。

今回の主病変は、脳症と消化管出血によるものであったと考えうるが、臨床的考察点を病理診断においても明確にすることが極めて困難な症例でありました。今後もより迅速かつ的確で適切な診療を行うために地域医療連携機関を交えた検討会を継続していく次第です。


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2016年4月14日に医療連携のつどいを開催しました。今回は当院放射線科で放射線療法(リニアック治療)をご担当されている木村正彦医師より「リニアック-ちょっと耳寄りな話-」と題し、ご講演いただきました。
放射線療法では腫瘍を標的とし、治療に必要な最低限の周囲正常組織を含めて放射線をあてます。治療の目的は大きく分けて、①完治させる(根治治療)、②がんの進行を遅らせる、③がんによる苦痛を抑える(緩和医療)など幅広く使われ、近年の照射技術の向上や手術・薬物療法との併用により治療成績は飛躍的に向上しました。
ところが、日本では、放射線医療に関する正確な情報が一般の方々へ十分伝わっていないという側面があり、残念ながらその真価が正当に評価されていないことが多いのが実情です。がんに対する放射線治療は、臓器の機能や形態を温存し、高い QOL(生活の質)を維持したまま治療できる長所をもっており、他の治療法と比較しても、患者に優しく、年齢に関係なく治癒を目指せる優れた治療法といえます。

福岡記念病院では今後も、放射線利用技術が診断 ・ 治療等のさまざまな医療の現場で活用され、深く浸透していることを、広くわかりやすく一般の方々へ理解いただけるよう取り組みを行ってまいります。

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去る、2016年3月18日 地域医療連携のつどい「福岡市西南地区泌尿器フォーラム」を開催しました。当日は雨模様にも関わらず、院内外より50名以上の方よりご参加いただくことができました。

講演では原三信病院 副院長兼泌尿器科主任部長 山口秋人医師より原三信病院の長い伝統の中で画一された上部尿管結石に対する治療を尿路結石症診療ガイドライン改訂の歴史に併せてご解説いただきました。
山口医師は、「結石の治療にはESWL(体外衝撃波結石破砕術)が第一選択として挙げられ、この方法は入院期間も短く、痛みや副作用の心配も少ない理想的な治療法ではあるが、結石のサイズや硬度によってはTUL(経尿道的尿管結石除去術)を併用する必要性がある。さらに、サンゴ状結石などの治療が難しい症例には、より大きな効果をひきだすために尿管鏡を用いたPNL(経皮的尿路結石除去術) が、より安心で正確な内視鏡治療として手術プランニングされることが多くなってきた」と話されました。質疑では、内視鏡機器やレーザー機器の操作制御技術やPNLとTULを併用したハイブリッド手術症例の要件についてなど患者さんの低侵襲治療につながる技術を熱心に聞かれていました。今後も当院のみならず、地域医療機関と連携した形での医療技術向上に努めて参ります。

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