去る、平成28年11月18日に第17回福岡西部地区医療連携講演会を開催しました。今回は熊本大学医学部付属病院糖尿病・代謝・内分泌内科 講師松村剛先生より「最新のエビデンスが導く糖尿病診療UP-TO-DATE」と題し、ご講演いただきました。

糖尿病では、甚だしい血糖上昇により、急性の意識障害を引き起こすこともありますが、その多くは緩徐に進行する臓器障害や糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症などです。これら疾患は、血管の動脈硬化の進行にも関係しており、その結果、致死的な疾患である脳血管障害、心血管障害も引き起こすため、糖尿病の診断と同時に糖尿病合併症検索も行う必要があると話されました。
また、これまでの糖尿病治療薬は膵臓に作用し、最終的にはインスリンを出すことで血糖コントロールを改善するものでしたが、腎臓に作用する治療薬であるSGLT2阻害薬を使用することにより、他の治療薬のメカニズムに影響を与えることなく、尿糖の排泄を増やし、高血糖を改善させる薬物療法についてご解説いただきました。
松村先生は、4月14日に発生した熊本地震の際には避難所でのケア活動に糖尿病チームとして参加され、多くの患者さんや地域の方々、地域医療機関の先生方と接し、改めてコミュニケーションと連携の重要性を感じられたとの事でした。

講演終了後には、SGLT2阻害薬使用のメリットや使用に関する注意点についてなどの質問があり、松村先生は認容性・有用性がわかる患者さんには第一選択としてSGLT2阻害薬を使用することも可能であると話されました。
福岡記念病院では、今後も地域の方々が安心して過ごしていただけるよう、地域医療機関との連携を強化し、知識・技術の向上を図って参ります。


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平成28年10月20日、第2回福岡市西南部大腿骨近位部骨折を考える会を開催しました。座長は整形外科部長 本家秀文が行い、大腿骨近位部骨折に対するリハビリテーションについて3講演いただくことができました。
始めに、急性期病院での大腿部近位部骨折に対するリハビリについて、当院リハビリテーション科坂本大和より、骨折発生から術前のリハビリ介入の有効性や術後、骨癒合までの期間における対する早期荷重のリスク、歩容改善の時期、ベッド上でのポジショニングや運動療法時の注意点など図解を用い詳しく解説しました。

続いて、多職種からなる院内医療チームを連携させた取り組みについて、社会福祉法人誠和会牟田病院リハビリテーション科主任 北嶋優一氏にご紹介いただきました。牟田病院では、退院前の自宅訪問に加え、リハビリ介入前に自宅訪問を行うことで、より効果が期待できる療法の選択を行えるようになり、さらに、多職種で構成された医療チームが連携し介入を行うことで、栄養状態や既往に合わせた効果的なリハビリを提供し、在宅復帰がスムーズに行えているとの事でした。会場からは、自宅訪問についての介入手順や頻度についてなど熱心な質問があり、自院での実例を交えご回答いただきました。

最後に、特定医療法人順和長尾病院 理事長 服部文忠先生より、長尾病院での脳血管障害時におけるリハビリテーションと大腿部近位部骨折におけるリハビリテーションの予後比較結果について報告があり認知症の既往がある場合には腿骨近位部骨折を受傷すると、通常と同じリハビリでは歩行機能回復に差が現れるという結果が発表されました。今後は、認知症患者に対するリハビリテーションのアプローチについて検討をし、患者さんが満足できるリハビリの提供を実施していく必要性があるとの課題を持たれていました。

当日は、会場が満席となるほどの盛会となりました。高齢化が進む中、大腿骨近位部骨折は身近な疾患となりました。患者さんが受傷前と変わらぬ日常生活を再獲得できるよう、急性期病院から回復期における多職種、他医療機関との円滑な連携と地域医療の質の向上を目指し、今後も定期的に「福岡市西南部大腿骨近位部骨折を考える会」を開催して参ります。

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平成28年9月21日に、福岡西部地区医療連携講演会を開催しました。
今回の講演会は、朝霞台中央総合病院脳神経外科・統括部長、脳卒中てんかんセンター・センター長で、東京女子医科大学助教の久保田有一先生をお招きして「急性期から慢性期までのてんかん診療のアップデート」と題しての講演会を行いました。
講演会では、朝霞台中央総合病院が抱える埼玉県東入間地区での、てんかんを既往とした意識喪失搬送症例をご紹介いただきながら、ビデオ脳波モニタリングを用いた確定診断やてんかん発作に対する各種ガイドラインに照らし合わせた薬剤の種類・選択についてご解説いただきました。

また昨今、アメリカで改訂された、てんかん診断のガイドライン解釈についてもお話しいただくことができました。高齢者にとってコモンディジーズであるてんかんについて、ご参加いただいた医療機関の医師からも熱心な質問や相談があり、久保田医師は脳神経救急医として、搬送時直後より脳波検査を実施する必要性や発作時の状況について家族から詳しい聞き取りを行うことの重要性について訴えられました。

医療のニューズも時代と共に変遷してきており、現在、急性期病院には救急疾患を断らない医療から、迅速に搬送を受け入れ質の高い医療を提供することと、専門医療に対して幅広く双方向的なコミュニケーションをする事が求められています。
福岡記念病院でも、より地域医療機関の皆さまが必要とする情報提供やより充実した意見交換が行えるよう取り組みを強化していく次第です。

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去る、平成28年8月23日に西鉄グランドホテルにおいて、第186回医療連携のつどいを開催しました。

今回の医療連携のつどいでは「心血管病フォーラム」と題し、佐賀県医療センター好生館 循環器内科 古閑靖章医長より「クラウドサーバーを利用した12誘導心電図伝送システムを導入して」の講演。さらに、九州大学循環器病未来医療研究センター 先端循環制御学部 廣岡良隆教授を座長にお迎えして、産業医科大学第2外科 園田信成准教授より「冠動脈インターベンション治療 UP TO DATE」の2講演を行いました。

佐賀県医療センター好生館で導入された、クラウドサーバーを利用した12誘導心電図伝送システムは、救急隊への指導も実施することにより、緊急症例に対してより効果的な救急救命が実施されているとの報告を受けました。福岡市内においてもこのシステムを救急現場へ普及させ、急性心筋梗塞患者の救命率向上に貢献することが期待されます。

次に、園田信成准教授より冠動脈インターベンション治療にて使用ステントやその手技について詳細にご解説いただき、内皮化を促進し完全なベアメタルステントとなる生分解ポリマーや生体吸収性スキャホールドのご紹介、IVUSガイドを用いることで、PCIの手技が劇的に変化していることについてのお話しをいただきました。

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また、情報交換会では、ご出席いただきました関連医療機関の皆さまと地域医療構想についての施設方針や取り組み、診療機能転換などについて密に語りあうことができました。今後も、急性期医療機能を担う病院としての重責を感じ、地域医療機関の皆さまと連携することで、地域住民の暮らしを支える医療提供を行っていく次第です。

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平成28年6月23日に臨床病理検討会を開催しました。
今回のCPCは、「消化管出血で死亡し、抗NMDA受容体陽性であった一例」について検討を行いました。

症例は脳神経内科 田代典章医師より、「30代男性、意識レベルJCSⅠ-3にて救急搬送、5日前より全身の倦怠感、発熱があり近医にて抗菌薬、消炎鎮痛剤を処方されていた。搬送時の所見では項部硬直や麻痺などの異常は認められなかったが、錯乱状態にありバイタル、瞳孔確認は困難であった。
第1病日よりプロポフォールによる鎮静下による治療を開始した。検査の結果、抗NMDA受容体陽性であり二次性脳炎を起こしているものと推測された。第2病日より気管挿管、第4病日には血漿交換を開始し、第6病日には維持透析を開始するも部分発作は持続的に出現し、第9病日には黒色便あり、消化管出血により死亡に至った」との経緯報告を受けました。

考察では、CKの著明な上昇原因がプロポフォール症候群によるものだけであるか、抗NMDA受容体陽性でグリオーシス、ミクログリアなどの脳炎所見の有無、消化管出血を起こすに至った要因について検討が行なわれました。

統括は、九州大学大学院研究科形態機能病理学教室 岩﨑健医師より行なわれ、「今回の症例は、脳内での炎症所見はないものの、海馬、延髄部で微量出血を認め、またアクティブではないものの鉤ヘルニアも認めた。さらに小腸大腸も黒色化しており僅かに潰瘍性病変もあった」との剖検報告がありました。
また、岩﨑医師は、搬送時搬送時には79.0kgであった体重が、剖検時には93.9kgであり、各臓器にも浮腫が認められた点にも着目され横絞筋融解症から腎不全を起こしていた可能性についても示唆されました。

今回の主病変は、脳症と消化管出血によるものであったと考えうるが、臨床的考察点を病理診断においても明確にすることが極めて困難な症例でありました。今後もより迅速かつ的確で適切な診療を行うために地域医療連携機関を交えた検討会を継続していく次第です。


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2016年4月14日に医療連携のつどいを開催しました。今回は当院放射線科で放射線療法(リニアック治療)をご担当されている木村正彦医師より「リニアック-ちょっと耳寄りな話-」と題し、ご講演いただきました。
放射線療法では腫瘍を標的とし、治療に必要な最低限の周囲正常組織を含めて放射線をあてます。治療の目的は大きく分けて、①完治させる(根治治療)、②がんの進行を遅らせる、③がんによる苦痛を抑える(緩和医療)など幅広く使われ、近年の照射技術の向上や手術・薬物療法との併用により治療成績は飛躍的に向上しました。
ところが、日本では、放射線医療に関する正確な情報が一般の方々へ十分伝わっていないという側面があり、残念ながらその真価が正当に評価されていないことが多いのが実情です。がんに対する放射線治療は、臓器の機能や形態を温存し、高い QOL(生活の質)を維持したまま治療できる長所をもっており、他の治療法と比較しても、患者に優しく、年齢に関係なく治癒を目指せる優れた治療法といえます。

福岡記念病院では今後も、放射線利用技術が診断 ・ 治療等のさまざまな医療の現場で活用され、深く浸透していることを、広くわかりやすく一般の方々へ理解いただけるよう取り組みを行ってまいります。

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去る、2016年3月18日 地域医療連携のつどい「福岡市西南地区泌尿器フォーラム」を開催しました。当日は雨模様にも関わらず、院内外より50名以上の方よりご参加いただくことができました。

講演では原三信病院 副院長兼泌尿器科主任部長 山口秋人医師より原三信病院の長い伝統の中で画一された上部尿管結石に対する治療を尿路結石症診療ガイドライン改訂の歴史に併せてご解説いただきました。
山口医師は、「結石の治療にはESWL(体外衝撃波結石破砕術)が第一選択として挙げられ、この方法は入院期間も短く、痛みや副作用の心配も少ない理想的な治療法ではあるが、結石のサイズや硬度によってはTUL(経尿道的尿管結石除去術)を併用する必要性がある。さらに、サンゴ状結石などの治療が難しい症例には、より大きな効果をひきだすために尿管鏡を用いたPNL(経皮的尿路結石除去術) が、より安心で正確な内視鏡治療として手術プランニングされることが多くなってきた」と話されました。質疑では、内視鏡機器やレーザー機器の操作制御技術やPNLとTULを併用したハイブリッド手術症例の要件についてなど患者さんの低侵襲治療につながる技術を熱心に聞かれていました。今後も当院のみならず、地域医療機関と連携した形での医療技術向上に努めて参ります。

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平成28年2月18日に臨床病理検討会を開催しました。

一例目の症例では、初期研修医 井上菜保子医師より「著明な低栄養下でMRSA肺炎を発症し死亡した一例」の症例提示がありました。
臨床診断では、肺水腫による呼吸不全はあるものの肺炎は軽快しつつあるものの、SIRS 4項目を満たしていたため敗血症と診断を行っていた。考察では、左足背にみとめられるASOによる皮膚腫瘍や水腎症が感染のフォーカスとはなったのではないかとの討議も行われたが、いずれも専門医による診断により否定された。
総括は九州大学大学院医学研究科形態機能病理学教室 木下伊寿美医師よりおこなわれ、病理解剖により腔水症が指摘された。このことより器質化肺炎が重篤化し、結果、敗血症を引き起こしたことが病理学的死亡原因であると診断に至った。

二症例目は、初期研修医 永井陽一郎医師より「HHSの治療経過中に原因不明の意識レベル低下とショックをきたし死亡に至った一例」の症例提示を受けました。当該患者には脳梗塞の既往があるもののMRIでは再発は確認できなかった。また、脳波検査によって器質的障害を示唆する所見があったが、癲癇性異常波は認められず、血液検査においても明らかな異常は確認できなかった為、確定診断は困難を極めていた。考察では死亡当日の胸部X線画像において、心肥大が著明に認められることに多くの医師が着目し討議を行った。
統括でも九州大学大学院医学研究科形態機能病理学教室 岩﨑健医師より重度の動脈硬化であったことが指摘され、結果、急性心筋梗塞を引き起こしたのではないかとの病理診断が提示された。

今回も臨床研修医や指導医師、地域医療機関の医師、看護師、検査技師等多くの方々にご参加いただきました。今後も臨床的問題点を検討した上で、CPC の場で病理医から病理解剖診断の結果を聞き、これらを統括して考察する場を多く設けていければと考えております。

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平成28年1月21日、西鉄グランドホテルにおいて、第181回地域連携のつどいを開催いたしました。

今回の地域連携のつどいでは、まず宗像水光会総合病院循循環器内科部長 竹本真生先生を座長に迎え、福岡地区心血管病研究会と題して、講演会を開催いたしました。会に先立ち、九州大学循環器病未来医療研究センター先端循環制御学部門の廣岡良隆教授より福岡地区における循環器疾患に対する医療連携のお話をいただくことができました。特別講演では当院循環器内科部長である舛元章浩医師より福岡記念病院での心不全治療についての解説と、九州大学大学院医学研究院循環器内科学 助教の井上修二郎先生より心房細動アブレーションの治療意義と治療適応についてお話をいただきました。特に心房細動アブレーションについては個々の患者を前にしたテーラーメイドでの治療の重要さについて詳しく解説いただくことができました。

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さらに、懇親会では、松尾内科病院 松尾尚院長より連携医療機関代表のご挨拶を賜りまたした後、シーサイド病院 坂本英彦院長より情報交換の御発声をいただき参加いただきました医療機関の皆さまと密に情報交換を行うことができました。また今回は、「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)」の認証に伴い開設しました国際医療担当室の紹介も行わせていただくことができました。

今後も地域医療機関より求められる病院であり続けるために努力を重ねて参りますので、引き続きご支援ご鞭撻のほど何卒よろしくお願いいたします。

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